LOVE TALK
「そういえば、こうして三人でお風呂に入るのって初めてですよね」
「そういやそうだな」
「オレ、シーザーに風呂で会ったことないや。いつ入ってんの?」
「僕は会ったことありますよ。夜中に入ったときに」
「軍師様は多忙なんだよ。なかなか時間が空かないんだ」
「どうせ寝てて入りそびれただけなんだろ?」
「おまえこそ、どうせ早くに眠くなるんだろ?」
「まぁまぁ二人とも」
「・・・にしても、シーザーって肌白いなぁ」
「カラヤのおまえと比べるなよ」
「トーマスと比べてもだよ」
「あ、二人とも、先に入ってて下さい」
「おう」
「でさ、シーザー、ちょっとは鍛えろよ。だから背だって伸びないんだ」
「関係ないだろ・・・。・・・・・・ていうかおまえ、どこ見てんだよ」
「んー、オレの勝ちかな! 17のシーザーに勝ててるってことは、オレって将来性ある?」
「ま、年は上でも背はおまえのほうが高いからな。って、何気にしてんだよ・・・」
「前風呂入ったとき、エースさんたちが比べあってた。でっかさで男の価値が決まるって」
「くだんねー」
「あ、トーマス、こっちこっち・・・・・・・・・!?」
「? ヒューゴ、どうし・・・・・・・・・!?」
「え? 何? どうしたの? ていうか、どこ見てるの!?」
「・・・・・・なあシーザー、下らないんじゃなかったのか?」
「・・・・・・そりゃ、おれとおまえは言ってもどっこいどっこいだろ」
「・・・オレたち、普通だよな? トーマスが身長の割りにちょっと人より立派なだけ・・・だよな?」
「・・・そう願おうぜ」
「? 一体なんなんだろう・・・。・・・・・・あ、ふふ」
「!! ひどいトーマス、いくら自分が勝ってるからって笑うことないじゃん!!」
「え? よくわからないけど、違うよ! ただ、二人の髪型、ぬれたらそっくりだなって思って」
「そう? むしろシーザーとトーマスのほうが似てない?」
「そうか? おまえら二人のほうが・・・って、おれたち三人の髪型がかぶってるってことか・・・」
「でもシーザーの髪の色ってすごいよね。お兄さんもだし。シルバーバーグの人ってみんなそうなの?」
「そういうわけじゃ・・・。ていうか、おまえに髪の色のこと言われたくねぇな」
「なんで?」
「毛先だけ黒いってどういう仕組みだ?」
「確かに・・・。でも二人とも、変わってますよね。僕なんか普通の茶髪で・・・」
「いいじゃん普通。黒髪ってきれいだよ!」
「・・・トーマスをフォローする為なら、嘘でも「茶髪が」って言っとけ」
「あはは、いいですよ。二人みたいな髪の毛になりたいなんて思ってませんし」
「あ、髪型といったらさ、セシルって髪の毛長かったんだね。最近知って、短いと思ってたから、ビックリしたよ」
「おれは今知ったな。そうだったのか」
「へえ、結構みなさん知らないんですかね」
「やっぱおまえは知ってんのか。兜外すようなことでもしたわけ?」
「そ、そんなことっ」
「兜外すようなことって?」
「・・・・・・さ、そろそろ湯船入るか」
「・・・・・・そうですね」
「あ、ちょっと、なんなんだよ!」
「あー、いい湯だな」
「そうですね」
「おいってば! 教えてくれないなら、代わりにシーザーの好きな人教えろよ!」
「なんでだよ。ていうか、おまえも大概しつこいよな・・・」
「え、好きな人いるんですか?」
「ね、トーマスも気になるよな」
「あ、うん、えーと・・・」
「ほら、教えろよ。その、年上の好きな人って、誰なんだよ」
「年上なんですか・・・・・・アップルさんとか?」
「はぁ!? ないない、おれの二倍くらい年上なんだぜ?」
「オレなんて八倍くらいあるんだけど・・・」
「・・・・・・。とにかく、アップルさんはあり得ねぇっての」
「じゃ、誰なんだよ。教えてくれないなら、アップルさんってことにしてみんなに言っちゃうよ」
「あのな・・・。残念ながら、好きだったのは昔の話だっての。あいつなんて、もう好きでもなんでもねぇ!!」
「そ、そうなんですか・・・」
「・・・あれ、なんかそのセリフ聞いたことある気が・・・」
「・・・・・・気のせいだろ」
「うーん・・・・・・・・・・・・あ!」
「思い出しましたか?」
「うん。ちょっと違うけど、シーザーのお兄さんの話題になったとき、「あいつなんて、もう兄弟でもなんでもねぇよ!!」って。・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・なんだよ二人とも、その目線は」
「もしかして、シーザーの好きな人って・・・」
「ちげぇよ!」
「まだ何も言ってないじゃん」
「・・・でも、まさかですよね。兄弟だし」
「だから、兄弟だと思ってねぇってば!」
「つっこみどころずれてない? ていうかシーザー、らしくないよさっきから」
「そうですね」
「・・・・・・・・・」
「なぁシーザー、スパッと認めろよ。オレとお前の仲だろ?」
「・・・おまえ、ほんと調子いいやつだな・・・」
「そうか? で?」
「あー、はいはい、わかったよ。その通りです。これで満足か?」
「・・・そ、そうなんだ。が、頑張って」
「うへえ。すごい人好きになっちゃったね」
「トーマス、そんな応援はいらないから・・・。ていうかヒューゴ、その言葉おまえにだけは言われたくないぞ」
「なんでだよ?」
「確かに僕は二人みたいに、とてもそんな人好きになれません・・・」
「そんな人ってなんだよ! ゲドさんは素敵な人だよ!」
「あ、そういう意味じゃ・・・・・・ごめん」
「揚げ足取るようなこと言うなよ」
「だって。シーザーはともかくさぁ」
「ともかくってなんだよ。97歳も年齢差あるくせに」
「そ、そうだけど・・・。でも、お兄さんよりはましじゃない?」
「おまえ、自分に当てはめて考えてみろよ。ゲドが自分の兄貴だったらなくなる程度の想いなのか?」
「そ、それは・・・・・・」
「うわ、ほんとに考えてやがる」
「な、なんだよ!」
「うわ、やめろよ大人げねぇ」
「まだ子供だもんね!」
「こんなときだけそんなこと言ってんじゃねぇよ!」
「ち、ちょっと、やめなよ二人とも! ていうかお湯が主に僕にかかって・・・・・・ぶはっ」
「あっ、ひどいシーザー」
「いや、おまえだろ。大丈夫か?」
「う、うん」
「・・・ごめんな」
「わりぃ」
「ううん。それより二人とも、ケンカはやめようよ」
「うん、そうだね。シーザーもごめん」
「おれこそな。ついムキになっちまった」
「・・・シーザーってお兄さんか好きな人が絡むと熱くなっちゃうよね。あ、お兄さんが好きな人なんだから当然か」
「・・・あのさ、誤解すんなって言ったろ。昔は、だからな。今は好きでもなんでもねぇ」
「振られたから?」
「ええっ、そうなんですか? ・・・でも、シーザーにはそのうちいい人が、きっと!」
「だから、そんな応援いらないっての・・・。そもそも振られてねぇし」
「でも、逃げられたって言ってたじゃん」
「それは、単にあいつがハルモニアに留学しただけだよ。それからは基本的に会ってねぇし」
「離れ離れになって、それでも未だに想ってるんですか・・・」
「しつこいねー」
「・・・おまえら、おれの話聞いてるか? ともかく、おれとあいつは敵同士。今はそれだけだ」
「敵同士・・・なんだかロミオとジュリエットみたいですね」
「てことはシーザーがジュリエット? あははははははは、似合わない!」
「・・・お前は似合ってたけどな」
「そ、そんなことなかったよ!」
「ああっ、二人とも落ち着いて! そろそろ出ましょう。のぼせちゃいますよ」
「そうだな。この間のおまえみたいに鼻血出して倒れるのは御免だからな」
「うっ・・・。って、そういえばそのときエースさんに「血が上に集まるようじゃまだまだだな」って言われたんだけど、それってどういう意味?」
「え、えっと・・・」
「・・・おまえ、ほんとに何も知らないんだな」
「え、なんだよ、みんなオレのことそうやってバカにして! しかも教えてくれないしさ」
「あ、あの、別にみなさんバカにしてるわけじゃないと思いますよ」
「だったら教えてよ! トーマスは知ってんの!?」
「え、あ、あの、少しは・・・知ってる・・・けど」
「トーマスに説明しろってのは無茶だよ。まだキスもしたことなさそうなのに」
「え、そうなの!?」
「えっ、そんなに変なことですかっ?」
「だって、てっきりセシルとしたことあるかと」
「なっ、ないよ! まだセシルは13歳なんだし!」
「それが理由なわけ?」
「あっ、そうじゃなくて! そもそも、僕とセシルはそんな関係じゃ」
「トーマスも、正直になりなよ」
「おまえみたいになるもの考え物だけどな」
「どーゆう意味だよ! オレは努力して、その甲斐あって恋人になれたんだから! シーザーもオレを見習ったら!?」
「はぁ!? なんでおれがそんなこと。だいたい、あいつなんて好きでもなんでもないって言ってんだろ!」
「ち、ちょっと二人とも・・・」
「嘘ばっか! なんでもないわけないだろ! ほんとはまだしつこく好きなくせに!」
「だったらどうだってんだ! あいつはおれのことなんてな、これっぽっちも気に留めてねぇんだよ!」
「ケ、ケンカは・・・」
「そんなことないよ! お兄さんも絶対シーザーのこと気にしてるって! もっとどんどんアプローチしていけばいんだよ!」
「無理だ! おれはおまえみたいに素直でも前向きでも打たれ強くもないんだよ!」
「あ、あれ、ケンカ・・・じゃない?」
「簡単なことだよ! 大きな声で主張すればいんだ!」
「なんてだよ!?」
「どっちにしても、二人とも声が大き・・・」
「こんなふうにだよ! オレはーゲドさんが大っ好きです!!!」
「よし! おれはーおまえが好きだっ、ア」
「やめてよ二人とも!!!!!」
「うおっ!?」
「ト、トーマス?」
「もう、二人とも! こんなところでそんな大声出して、すごく注目浴びちゃってるじゃないか!」
「・・・それって、注目されてるのはトーマスなんじゃねぇの?」
「え?」
「トーマス、鼻血、出てる出てる」
「ええっ!? あ、ほ、ほんとだ」
「のぼせちゃったのかな・・・」
「それか、エロいことでも考えてたんだよ」
「そ、そんなことっ」
「エロいこと考えてたら鼻血出るの? ていうかエロいことって? シーザーも今考えてるの?」
「だから、考えってないって!」
「なんでおれも考えてんだよ!」
「だって、シーザーも鼻血出てる」
「あ、ほんとです」
「・・・・・・」
「あははは、かっこわりー。・・・って、あれ?」
「あ」
「ははっ、おまえも出てんじゃん」
「お揃いですね。あはは」
「へへへ」
「ははははっ」
「あはははっ」
「なんだか、楽しくなってきたね・・・」
「そうですね。頭の中がボーっとしてるかんじで・・・」
「ていうかおれ、さっきからトーマスが二人に見えるぜ・・・」
「おい、大丈夫かよシ〜ザ〜」
「僕はトーマスですってば〜」
「あ、三人に・・・・・・・・・」
「あっ、シーザー大丈夫ですかぁ? こんなところで寝たら溺れちゃいますよ〜? って、あれ、ヒューゴは?」
「ブクブク」
「し、沈んでる〜。もう、二人とも・・・・・・あぁ僕も疲れてきちゃいました・・・なんだか意識が・・・・・・」
英雄、軍師、城主、お風呂で危機一髪!!
炎の英雄ヒューゴと、その軍師シーザー、そしてこの城の城主トーマス。炎の運び手を代表する三人がそろって昨日医務室に運ばれるという事態が起こった。一体三人に何があったのかというと・・・・・・単にお風呂でのぼせて倒れてしまったらしい・・・。
年も近い三人は、一日の疲れを癒すため仲良く風呂に入りにいった。そして会話が盛り上がり、風呂から出るタイミングを逃したのだろう。晩酌をしていたワン・フー、ジョーカー、レオが酒樽を浴槽に落とすというハプニングもあり、湯を掛け合って遊んでいたらしい三人がうっかりそれを飲んでしまった可能性もある。
なお、そのときシーザーが好きな人の名を叫びかける場面があったらしいが、残念ながら相手の名はわからなかった。どうやら年上で「ア」から始まるなまえらしく、アップルだという声もあるが、真相は未だ謎である。
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END
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何故かトーマスのアレがでかいってことになりました。
おかげで公式にするか迷ってます。嘘です。
シーザーが白状するかどうかで迷ってるんです。
あとは、トーマスがセシルを好きなことを自覚してるのかしてないのか、
そもそもこの時点でそういう意味で好きなのかどうか。
ヒューゴはこれが、そのまま公式です。ほんとに何も知らない子なんだね・・・。
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