LOVE WORRY
「・・・・・・・・・ん」
意識を取り戻したパーシヴァルは、ゆっくり目を開けた。視界に映るのは、見慣れない天井だ。
「あ、目が覚めたようですね」
聞き慣れた声が聞こえ、パーシヴァルはそっちに目を遣った。ベッドに仰向けに寝かされているパーシヴァルの、丁度真正面に立っているのは。
「・・・サロメ殿」
その呼び掛けというよりはただ口にしただけの言葉にサロメは小さく頷くと、パーシヴァルがまだ自分の状況を把握していないことを表情で察したのか、それを教えた。
「執務中に倒れたのですよ。最近、激務が続いていましたからね。あまり寝てなかったのではないですか?」
「・・・ああ」
パーシヴァルはやっと思い出した。確かに最近、処理しなければならない書類がたまっていて、自然と睡眠時間が削られていたのだ。そして、あと少しで片が付くというとき急に眩暈を感じて、そこで彼の意識は途絶えたらしい。そうだと気付いてみれば、今いる部屋が医務室だということもわかった。
「それは、ご迷惑をお掛けしました。まさか、サロメ殿がここまで運んで下さったのですか?」
サロメは同じ部屋で仕事をしていたので、だから今もこうして付き添ってくれているのだろう。その部屋からこの医務室までは決して近くはないが、パーシヴァルは鎧を着ていないし、実はなかなかガタイのいいサロメならば可能かと思って、そうならば謝辞を口にするつもりでパーシヴァルは聞いてみた。
すると、サロメは笑って、視線を隣に向ける。
「いえ、私ではなく、彼が」
パーシヴァルがその視線を追って、目を横に移せば。
「・・・いたのですか」
パーシヴァルはその存在に全く気付いていなかった。それは意識がまだハッキリしていなかったからというのもあるだろうが、それ以上にこの男のいつもは鬱陶しいほど前に出てくるオーラが今はなかったからだろう。
「・・・ボルス殿、あなたが運んで下さったのですか?」
「・・・ああ」
パーシヴァルが問えば、ボルスはやはりいつもとは違う声のトーンで肯定する。表情もどこか冴えなくて、ボルスのほうこそ体調を崩しているのではないかとパーシヴァルは思った。
しかし、次のサロメの言葉で、パーシヴァルはその予想が見当違いだったと知らされる。
「ボルス殿は、それはそれは心配していましたよ」
「サ、サロメ殿っ」
ボルスが慌てたように、何を言うんだという視線をサロメに向けたが、サロメはそれを気にせず続ける。
「あなたが倒れたとき誰よりも早く駆け寄り、一目散にここに運び込み、つい先程まで何度も顔を覗き込んで様子を窺っていましたから。「ただの疲労ですから大丈夫です」と何度言ったことか」
サロメはそんなボルスの様子を思い出しているのか、口元を綻ばせながら教えた。
「そ、それは、同僚として当然のっ・・・」
ボルスは自分を弁護しようとしたようだが、その声は上擦っているし顔が赤くなってしまっている。
パーシヴァルは上半身を起こしながら、自然と顔に笑みが浮かぶのをとめようとせずボルスを見上げた。
「そこまで心痛を与えてしまったのなら、何かお詫びをしないといけませんね」
「い、いや、そんなことを期待したわけでは・・・」
「そんなこと? 何を想像されたのですか、ボルス殿?」
「・・・・・・・・・・・・・・・っ!」
揶揄われたことに数秒遅れで気付いたボルスは、顔をさらに赤くする。その反応に満足して、パーシヴァルはサロメに視線を移した。
「サロメ殿ももうご政務にお戻り下さい。私もすぐに戻りますから」
「いえ、大事を取って今日はもうお休み下さい。代わりは他の者に努めさせますから」
サロメはそう言って、ボルスのほうを目で指す。
「お、おれがか!?」
「ボルス殿にはちょっと難しいかもしれませんが、いないよりはましでしょう」
「なにっ!? おれにだってそれくらい出来るさ!」
サロメはボルスを乗せることに容易く成功する。
「それでは、明日からはまたお願いしますよ。それでは」
そしてパーシヴァルにそう言うと、サロメはドアに向かった。ボルスも、どこか釈然としないものを少しは感じているようだが、それに続く。
「パーシヴァル」
部屋を一歩出たところで、ボルスはパーシヴァルを振り返った。
「このカリは、いつか返してもらうからな!」
「ええ、もちろん。あなたの好きな方法で、構いませんよ」
パーシヴァルがサラッとそう返すと、ボルスはまた顔を赤くして、ドタドタと足音も高らかに部屋をあとにした。
「・・・・・・やれやれ」
部屋に一人残ったパーシヴァルは、急に静かになった室内に苦笑まじりの溜め息を聞かせる。
「一体、何を考えているのやら・・・」
それから、パーシヴァルは伸びをすると、またベッドに背を預けた。
「まあ、せっかくボルス殿が頑張ってくれるのだ、ありがたく休ませて貰おう」
鼻唄でも出てきそうな軽い口調でそう言うと、パーシヴァルは目を閉じた。
END
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ってかんじの夢を見ました(笑)
さすがにここまでしっかりしたストーリーにはなってませんでしたが。
しかしボルパー度はこんなかんじだったわけです。
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