28.強い手と長い睫。
例えば、強い手を持つ男の人と長い睫を持つ女の人。どっちを選ぶかというと、男だったら普通後者だろう。オレ、楽太だって、その例外ではなかったはずだ。
それなのに、人生何がどうなるかわからないものである。
なんて、つまり何が言いたいかっていうと、まあつまり、まさかオレが自分よりでっかい男の人を好きになるなんて思ってもみなかったってこと。
今自分の隣で寝ているのは、オレの好きな人、センセイ。
センセイは女っぽい女の人ではなく、ちょっと男っぽい女の人でもちょっと女っぽい男の人でもなく、れっきとした男らしい男の人だ。
もちろん、睫だって長くない。切れ長ではあるけど吊り目で、黒目がちってこともなく普通。目つき悪くって寝起きなんて特に睨まれてるんじゃないかってくらい怖い。
でもオレは、そんなセンセイの目で見つめられるのが大好きだ。
手だって、オレよりもずっと大きい。細くすらっとキレイ、なんてこともなくて、ごつごつしてる。握力なんてとっても強くて、もしかしたらリンゴを素手で割れるんじゃないかって思えるくらい。
でもオレは、そんなセンセイの手で触られるのが大好きだ。
肌なんて、オレのほうが柔らかいぶんよっぽど女の人に近い。硬いんじゃなくて張りがあるんだけど、白かったり手触りがよくってすべすべだったりはしない。
でもオレは、そんなセンセイの肌に触るのが大好きだ。
体つきは、もうどこからどう見たって立派な成人男子。外国人にだって負けない長身は、弓道やってるせいか姿勢がよくって余計に高く見え、オレより頭一個分以上くらい大きい。そんなに鍛えてないのに筋肉だってちゃんと付いてて、細いとか小さいとか華奢だとかからは程遠い。
でもオレは、そんなセンセイの体に抱きしめられるのが大好きだ。
「・・・センセーイ、まだ起きないのー?」
目の前の顔をちょっとつついてみたけど、全く起きる気配はない。
だからオレはその手でセンセイの唇をなぞってみた。何度もいろんなとこで触れたことがある、寝てるときはしっかりと引き結ばれているそこは、形や色が特別いいわけじゃないけど、やっぱり大好き。そこから出る低い声も、大好き。
これこそ女の人には絶対ない、口周りのひげ。寝ている間に伸びてきてチクチク指にささる、そのかんじもなんだか大好き。閉じられた目に懸かる真っ黒でサラサラの髪の毛も、大好き。
あげればキリがないくらい、ぜんぶぜんぶ、大好き。
大好きだよ、センセイ――。
END
ええと、やっぱり受的要素が
「黒髪サラサラ」しかない武流。
そして、そんな武流へのラブがどうにもとまらない
攻とはとても思えない楽太、でした。(アイタタタ)
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