#Acceptability;おまけ





「あ、ちょっと待て」

 今度こそズボンを脱がそうとした楽太を武流がまたしても制止した。

「今度はなんだよっ。オレ我慢強くないって言ってるだろっ」

 楽太の抗議に武流は上半身を起こしながら言う。

「どうせするならベッドでしないか? それと、お前制服は脱いどけ」

 冷静に言って立ち上がる武流を、楽太はちょっとむくれながらもあとを追った。

「もー、ムードないなぁ」

「そんなの、お前相手に求めてないよ」

「うわっ、ひどっ。って、何してんの?」

 すぐにベッドのある部屋に向かうかと思えば風呂に行ってボディーソープとシャンプーなどを見比べている武流に、楽太は心底不思議そうに尋ねる。その様子に武流は諦めたような溜め息をついた。

「お前、あるのは本当にヤル気だけだな」

「・・・それって遠回しにヘタって言ってんの?」

「それ以前の問題ってこと」

 武流は楽太の頭を軽く叩いて、そのまま引っぱるようにベッドまで連れて行く。

「ほら、制服脱げって」

 武流は汚れたりしわになったら困るだろうと、掛け布団を降ろしながら言った。そのいかにも「先生」な言動に、楽太は逆に闘志を燃やす。

「なんっかムカつく。そうやって冷静にしてられんのも今のうちだからなっ」

 楽太は言われた通り服を脱ぎながら、勢いよく言った。それを受けて武流は、ベッドに横になりながら微かに笑って言う。

「出来るんなら、やってみろよ」

 その言葉は、先程の試すような文句と同じなのに、それとは比べものにならないほど甘く響いた。





 楽太は遂に武流のズボンを脱がし終え、しかしこれからどうすればいいのかわからず困る。

「ええと・・・ど、どうするの?」

「基本的に、女と同じ」

 言って武流は楽太のほうにボディーソープを放った。それ専用のものなどあるわけがなく、ボディーソープだから体に悪いこともないだろうと、使わないよりはましだと思って持ってきたのだ。

 その用途をやっと思い立ったらしい楽太は、ぎこちない動きでそれを手に取る。

 楽太のそんな様子に、武流は上半身を起こしてその頭を優しく撫でてやった。

「さっきの自信はどこにいったんだ?」

「う、うん。でも・・・」

「何も考えずに突っ走るのが、お前だろう」

 武流はそう言って、楽太に軽く口付ける。

「・・・そんでセンセイは、オレのそんなところも、好きなんだ?」

「そう」

 短く答える武流に、楽太は単純が売りなだけあってすっかりいつもの調子を取り戻した。

 楽太はエヘヘと笑ってキスしながら武流をうしろに押し戻す。

 しばらくそのまま離れず舌を絡ませたりしていると、一旦は引いていた熱がすぐに戻ってくるのを感じた。楽太は今度こそとまらないぞと思って、ボディーソープを取り直す。

 楽太はそれを人差し指に塗りつけ、軽く立てている武流の膝に片手をのせて体を支えながら、その指をそっとその部分に押し付けた。そして少しずつ入れていく。

「い、痛くない?」

「そりゃあ・・・少し、は」

 心配そうな楽太に武流は軽く眉をひそめているだけの表情で答える。しかし、指を進めるごとに息をのみ声をもらす武流は明らかにつらそうだった。

 だが、楽太にはもうとめられなかったし、武流もとめて欲しくはないだろう。

 ただなるべく苦痛を軽減してやろうと、楽太は自分の少ない忍耐を総動員して出来る限り丁寧にそこをほぐしていった。

 何度かボディーソープを継ぎ足しながら内壁に塗りつけていく。最初は人差し指だけだったが、途中から中指も加えて様子を見ながら少しずつ動きを大きくしていった。

 武流も段々と楽に呼吸出来るようになっていったが、楽太の指がある部分をなぞったとき思わずといったように息をのむ。楽太は痛かったのかと手をとめようとしたが、それまで萎縮したようになっていた武流のものが微かな反応を示しているのに気付いて、もう一度そこに触れてみた。

「・・・センセイ、ここイイの?」

 楽太にはその構造はよくわからなかったが、そこを擦ったときの武流の反応は明らかに感じているようだ。

 楽太がついそこばかりを攻めると、武流は目を軽くしばたたかせながら掠れた声を出した。

「も、いいから・・・」

 その言葉に楽太は思わず喉を鳴らす。平気な振りをしていたが、結構前から限界ギリギリだったのだ。

 楽太は指を抜いてその体勢に入ろうとした。しかし体格差があるので抱えることもできず、楽太は困ったように武流を見た。

 武流は周りを見渡し、目を留めた枕を腰の下の辺りに敷く。

「これで、出来そうか?」

「う、うん」

 楽太の頭に一瞬据え膳という言葉が浮かんだ。しかし、そんなものはすぐに隅に追いやられる。

 楽太は武流の足を少し曲げるようにして間に入り込み、自分のすでに滾っているものをそこにあてがった。

「入れるよ?」

 そして言うと楽太は、返事も聞かずにそれをうずめていく。充分に慣らしたそこは思ったよりもスムーズに楽太を受け入れた。しかしそうはいっても、楽太のそれは立派とはいえないが指とは比べものにならない質量で、腰を進めるたびに武流はつらそうな声をもらす。

 楽太は全てを収めると動きをとめた。武流の中は熱くその締め付けてくる感じに楽太はじっとしているのがきつかったが、せめて武流が呼吸を整えるまではと我慢する。

「・・・遠慮、せずに、動けよ」

 そんな楽太に武流が息継ぎの合間に言った。

「でも、センセイ、つらいだろ」

「お前のほうが、つらそうに見えるぞ」

 そりゃオレは顔に出やすくって、センセイは顔に出にくいからだ、と思った楽太に武流が手を差し伸べる。

「そんな顔見てるほうが、つらいよ」

 届かないその手の動きに、楽太は頭を優しく撫でられる感触を思い出す。いつもは一種の安心感を受けるそれに、しかし今は堪らなく欲を誘われた。

 楽太は武流の呼吸も落ち着いてきたので、ゆっくり腰を動かし始める。最初は武流を気遣って控えめだったが、段々とその動きは激しくなっていった。

 楽太はそれでも武流の苦しそうな息遣いになんとか思考を働かせて、先程武流が反応を示した辺りを擦るように動かす。そこを集中的に突かれて、次第に武流のもらす声に苦痛以外のものが混じりだした。

 楽太はそれを嬉しく思いながら、しかしそれ以上は気を遣っている余裕はなくなっていく。

 ぼやける意識の中、楽太はただ自分の快感を求めて体を動かした。





「おい、気を付けろよ」

「何が・・・ってー」

 掛けられた声に聞き返していた楽太は思いっきり前のめりにこけた。

 あのあと風呂に入って、楽太は武流に着替えを借りたのだ。体格が違うわけだから服の裾がかなり余り、それに足を取られたのである。

 ちゃんと裾捲れよと言われてその通りにしながら、楽太は絶対大きくなってやると今まで以上に強く思った。

 麦茶を受け取って一息ついた楽太は、実は気になっていたことを隣に座った武流に尋ねた。

「なあセンセイ、オレ何点だった?」

「小テストのことか?」

「じゃなくって、エッチの上手さ」

 バカらしい質問だが、聞いている楽太は結構真剣らしい。

「・・・聞いてどうするんだ?」

「今後の参考にする」

 どう参考にするつもりなのかわからないのと、その質問に答えることの難しさに武流は軽く眉をしかめる。

「でもな、男としたのなんて初めてだから、点を付けろと言われてもな」

「えっ、初めてなの?」

 そうだと答える武流に楽太はちょっと驚いた。自分とすることに抵抗がないようだったので、もしかしたら経験があるのかもしれないと思っていたのだ。

「なんだー、初めてなんだー」

 楽太は思わずニヤついた。しかし、ふと引っ掛かりを感じて眉を寄せる。

「男と・・・ってことは、やっぱり、女の人とはしたことあるの?」

「・・・さあな」

「さあなって、どっちなんだよー」

 武流の年齢を考えるとあってもおかしくないが、楽太はそうだったらなんだかショックだと自分のことは棚に上げて思った。

 そんな楽太に素知らぬ振りをして、武流は「そうだな」と口を開いた。

「四十点」

「えぇっ、なんか低いじゃん」

 その発言に楽太は武流の女性経験を聞いていたことなどすっかり忘れてなんでだと問う。

「まだまだ向上の余地があるってことだよ」

「それってオレ、けなされてんの?」

「どっちかいうと、誉めてるほうかな」

 言いながら武流は楽太の頭を撫でる。

 その仕草に、感触に、楽太は改めて思った。

「センセイ、好き」

 突然呟くように言った楽太に、しかし武流は手の動きはそのままで当然のように返す。

「俺も、好きだよ」

 しかも、本日何度目かの笑顔付きで。

 楽太はエヘヘと笑い返しながら、今度は心の中だけで思った。

 センセイを好きになってよかった。センセイを好きだって気付けてよかった、と――。





END


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目指したのは、ギャグエロです。

しかし楽太、あっちの楽太とは比べ物にならないくらい頑張ったな・・・。

そして武流がなんか優しい。

武流の対楽太甘やかし度グラフ、これ以降は落ちる一方です。

にしても楽太、「据え膳」って言葉知らなそうだよね・・・