#Feeling





「じゃ、また明日っ」

 明るい笑顔で言って楽太は車を降りていった。マンションに入っていくのを見届けてから車を出す。

 途中コンビニで夕食を買ってから自分の部屋に帰って、リビングではなく寝室に行ってベッドに横になる。

 こうして体を休め落ち着くと、さっきまでのことがまるで嘘のように思える。しかし、現実なのだ。

 実際に、楽太は自分を好きだと言い、自分も楽太を好きだと言った。

「・・・ああ、やってしまった」

 思わず呟く。

 やったというよりはやられてしまったのだが、などと茶化してみても、結局は変わらない。

 自分が、楽太の好きだと言う気持ちを受け入れてしまったことは。

 そもそも昨日楽太が話したいことがあると言ってきたとき、まさか楽太がそんなことで悩んでいるとは思っていなかった。最近様子がおかしいことには気付いていたが、原因は勉強や友人関係やその辺のことなのだろうと思っていたのだ。

 だって、十も年下の男に恋愛感情を持たれるなんて、誰が思うだろう。

 そして、自分が楽太に向ける好意だって、その正確な名前は知らなかった。今年で二十六になろうというのに、今迄 誰かをそういう意味で好きになったことはたぶんなかったのだ。

 そんな自分が、十も年下の男子生徒に恋愛感情を持つだなんて、誰が思うだろう。

 だから、あんなふうに誘うようなことを言った。

 本当だったら適当にはぐらかしたりすべきだったのだ。自分の先生という立場を考えたなら。楽太の十六というこれからを考えたら。

 しかし、確かめたかった。どうしても、確かめたかった。楽太が自分に向ける感情と、自分が楽太に向ける感情を。

 だから、あんなふうに誘うようなことを言った。いや、ようなことではなく、間違いなく自分は誘ったのだ。そうすることで、楽太を試すのと同時に、自分も試したのだ。

 楽太にはなんとも思っていないやつにあんなことはさせないと言ったが、あの時点ではわかっていなかった。しかし、おそらく予感と、そして期待はあったのだ。だから身を委ねた。

 その結果、出た答え。

 楽太が自分に見せた、確かに欲を伴う感情。楽太は、本当に自分のことをそういう意味で、好きなのだ。

 そして、そんな楽太に感じた、確かに欲を伴う想い。自分は、楽太のことをそういう意味で、好きなのだ。

 それでも、二人の想いが同じであったとしても、応えるべきではなかったのかもしれない。楽太の想いは勘違いか一過性のものだろうからと、そう言い聞かせるべきだったのかもしれない。

 しかし自分は、楽太の気持ちを受け入れ、自分の気持ちを伝えることを選んだ。しかも、今そのことを後悔する気持ちなど微塵もない。

 自分は楽太のことが好きだ。素直に正直に心からそう言える。

 そして、楽太の想いは、その笑顔は、これから間違いなく何よりも自分に向けられるのだ。

 それがわかっていて、どうしてみすみす手放すことが出来るだろうか。楽太の想いと、自分の想いを。

 休息を求める体の欲求にしたがって目を閉じながら、思った。

 もしどんなに幸せな夢を見ようと、この現実には敵わないだろう、と――。





END


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幸せそうですね、はい。

しかし、二十五で初恋って、ヤバイよな・・・

女と経験があるのかは、考え中。

でも、二十五で童貞って、ヤバイよな・・・






サンプル。