#Interest:アダルトビデオ編





 楽太は手に取ったビデオを見て、少し考えた。そして、そのビデオをデッキに入れることなく側に置く。

「これ見るの、昼ごはん食べてからにしようよ」

 武流にそう言うと、楽太は昼食を再開した。武流も、確かにご飯を食べながら見るビデオじゃないだろうと思って箸をとり直し、和やかに昼食時間は過ぎていった。

 そして数十分後、食べ終わって一息ついてから楽太はいそいそとビデオを手にテレビに近付いていった。

 楽太が選んだビデオ、それはずばりアダルトビデオである。どうしてこんなものを借りたのかというと、その原因はレンタルショップでの楽太の一言だった。





「ね、センセイ、あそこ入ったことある?」

 楽太は店内の一角を指して言った。ちなみにこの店は武流の実家に近い、学校からは結構離れているところにあるので、楽太は堂々と武流のあとについて歩いている。

 そして、楽太が指差したのは、他からはまるで隔離されたようないわゆる18禁コーナーだ。明らかに入りずらそうなそこに、十八以上にはどうやっても見えない楽太はもちろん入ったことがないので、中がどんなものかこっそり興味があったのだ。

「ないけど・・・何か借りたいのか?」

「え、と、とってきてくれるの?」

 前半は予想通りだったが後半は予想外だった武流の返答に楽太はビックリする。

「どんなのがいいんだ?」

「え、えっと、教師モノ」

 楽太はちょっと迷ったがせっかく借りてくれると言うのだから頼むことにした。やはりこういうものに興味津々な年頃なのである。

 そして武流は楽太のリクエストを聞くと、すたすたと18禁コーナーに行き躊躇わず入っていったのだった。





 そんなわけで借りられてきたのが、その名も「女教師〜淫らな課外授業」という楽太の注文通りのこのビデオなのだ。

 ちなみに、真っ昼間からこんなビデオを見るのはどうかと思うが、しかしいつも真っ昼間から平気でエッチしている二人はもちろんそんなこと気にしていなかった。

 そんなわけでビデオをデッキに入れると、楽太は元の場所に戻ってなんとなくキッチリ座る。すぐに再生が始まり、それっぽい少し薄暗い画面が映った。そしてしばらくは前フリのようなものが続くが、次第にストーリーはおやしい方向に進んでいく。

 そして、「先生が、教えてあげる」というお決まりのセリフで、遂にいかがわしい場面が始まった。楽太はテレビに釘付けになってしまう。普通の男子高校生の嗜好からは外れてしまった楽太だが、やはりこういう物に興味がなくなったわけではない。なによりこれは、先生と生徒モノなのだ。楽太はもちろんビデオの二人と自分たちを重ねて見ていた。

「・・・」

 女教師にリードされ翻弄されながら、男子生徒はその行為にのめり込んでいく。楽太は、その気持ちがわかるとか武流と初めてしたときに似てるなんて思った。そして、ふと武流はどんな顔をしてこれを見ているのだろうということが気になりだす。

 楽太はそっと武流を窺った。その表情は、しかし普段と全く変わらないクールなものだ。予想通りだったとはいえ楽太はちょっとガッカリする。しかしすぐに、自分以外のもので武流が興奮するのは嫌だなと思い返した。

 そして楽太がそろそろ画面に戻ろうとしたそのとき。AVならではの不自然な展開に対してか、武流が小さく笑う。その瞬間、楽太は堪らなくなった。

「センセーイっ」

 楽太はテーブルのテレビ側を回って武流に飛びついた。

「いきなりなんだ?」

 武流は問い掛けながら、その答えがわかっているのか嫌そうな表情になる。そして、それに対する楽太の答えは、武流が思った通りだった。

「センセイも、教えてよっ」

「・・・・・・、数学をか?」

「ちーがーうーっ」

 楽太は益々強く抱き付いて、武流の首筋に顔を寄せる。

「エッチしようって言ってるのっ。ねっ」

 ねだる楽太に、しかし武流は素っ気なく返した。

「どうして俺が相手してやらないといけないんだ。ビデオ見て勝手に興奮したんだから、一人で始末しろよ」

「ちーがーうーっ。ビデオじゃなくってセンセイ見て興奮したのっ。だからセンセイが責任とってよっ」

 楽太はまだ続いていたビデオを切って、武流にキスを始める。