ふと目を覚ますと、ここがどこかも自分が誰かも、わからなかった。
純日本建築の建物の中を適当に歩いていると、リーゼントの男にすぐに出会って。自分がいわゆる記憶喪失という状態にあることを認識し、そして雲雀恭弥という自分の名や大体の事柄を教えてもらった。
その部下だという草壁によると、おそらく戦闘中に頭に打撃を受けたせいなのだろうとのことらしい。ヤクザ紛いのことを生業にしているようで、得物にしていたというトンファーを手にしても確かに馴染むが、何かを思い出すことはなかった。
草壁はいろいろ案じているようだが、元々物事に動じない性格だったのか、雲雀は特に不安に思うこともなく。そのうち記憶は戻るだろう、戻らなくてもそれはそれで生きていくのに問題はないと思った。
ただ一応人付き合いもあるだろうし、しかしいちいち対応するのも面倒なので、雲雀は自分の組織のアジトだという屋敷にしばらく引き篭ることにした。
草壁には、記憶喪失になったことは必要最低限の人間にだけ話すように言っている。それから一週間ほど経ったが、訪ねてきた人は数えるほどで、人付き合いが嫌いだったのかと思うとなんとなく雲雀は納得した。
そしてこの日、その数少ない知り合いの内の一人なのだろう男が、雲雀を訪ねてくる。自室で寛いでいたところ、遠慮なく襖を開け放って部屋に入り込んできた。
「恭弥、記憶なくなったって本当なのか!?」
「・・・・・・・・・」
それを伝えられたということは、わりと親しい付き合いだったのだろうが、一体どこで知り合ったんだろうと雲雀は不思議に思う。
明らかに日本人ではない外見だが、その口から出た日本語は流暢だ。そして、その遠慮ない態度や物言いは、今まで自分に面会に来た誰とも違う気がした。
「・・・あなた、誰?」
率直に雲雀が問い掛ければ、その男は長身の体をおおげさに揺らしながら答えてくる。
「うわ、ホントに忘れてんだな! オレはディーノだ」
「・・・ディーノ・・・?」
復唱してみたが、いまいち口に馴染まなくて、本当に知り合いなのかと雲雀は疑わしく思った。眉をしかめながら見上げれば、ディーノと名乗った男は何か変な顔をしている。
「・・・何?」
「いや、名前呼んでくれたこと、なかったから・・・」
「・・・・・・」
半ば呆然と答えられ、名前すら呼ばない関係というのは一体どういうものだったのだろうと雲雀は首を傾げたくなった。しかし思い返せば、この男のほうは親しげにファーストネームを呼び捨てで呼んできた気がする。
「・・・で、あなたは僕と、どういう関係だったわけ?」
「それは・・・」
ディーノはジッと雲雀を見つめてきたかと思うと、目の前にしゃがみ込んできた。そして唐突に、唇を重ねてくる。
「・・・・・・っ」
キスされたのだということを認識した瞬間、雲雀は手元に置いてあったトンファーをとっさに掴み、ディーノの頭にぶつけた。
「いってー!!」
ディーノは声を上げて頭を押さえたが、もろに入ったはずなのにそれくらいですんでいる辺り、余程頑丈らしい。
思わず少し感心してしまう雲雀に、ディーノは自分を殴りつけた男だというのに笑い掛けてきた。
「ハハ、記憶喪失になっても、恭弥は恭弥だな」
どこかホッとしたように言って、しかし今度は少し拗ねたように口を尖らせる。
「でも、恋人のこと忘れるなんて、冷てーぞ」
「・・・・・・恋人?」
この男と、自分が。まさかと思っても、雲雀には否定する材料がなかった。かといって勿論、そういう記憶だって残ってはいない。
「・・・本当?」
「忘れた上に疑うなんて、ひでーぜ!」
わざとらしくショックを受けたように言って、ディーノはまた笑った。
「ま、オレも早く記憶が戻るように協力するぜ」
そして、また掠めるようにキスしてくるから、雲雀もまたとっさにトンファーで殴る。
「何するの」
何も覚えていない相手に、よくも遠慮なく手を出してこれるものだと、雲雀は顔をしかめた。しかしディーノは、悪びれた様子など微塵も見せない。
「だって、こーいうのから思い出すかもしれないだろ?」
「・・・・・・・・・」
確かに、この男の言っていることが事実なら、その可能性はあるだろうが。少なくとも、今の雲雀はそれを素直に受け入れることなど出来ない。
「・・・言っておくけど、今の僕とあなたには、なんの関係もないよ」
「またそういう冷たいこと言う!」
雲雀がキッパリと言っても、ディーノは応えた様子なく笑って、いたわるように頭を撫でてきた。
「ま、ぼちぼちオレのこと思い出してくれよ」
「・・・・・・・・・」
ディーノの言葉を鵜呑みにするつもりはない。ただ、不意打ちのキスはともかく、こんなふうにディーノに触れられるのは、確かにそう嫌ではない気がした。
実際のところどうだったのだろうと草壁に聞いてみたが、プライベートなことは把握していない、としか返ってこなかった。
ディーノという男は、イタリアでマフィアのボスをやっているらしい。なるほど仕事で付き合いがあった相手なのかと思えば、それ以前からの知り合いだそうだ。
彼の大体の人となりを聞いて、それでも雲雀はいまいち判然としなかった。随分と呑気そうに見えたあの青年が、マフィアのボスなんてものをやっていることもだが。
やはり、恋人だったと断言したディーノの言葉が、どうしても引っ掛かっていた。
「ねぇ・・・僕とあなたの関係って、何?」
だから雲雀は、この日も遥々イタリアからやって来ているディーノへ、そう問い掛ける。それに対するディーノの答えは、いつも一緒だった。
「だからー、恋人だって」
そして隙あればキスしようとしてくるディーノに、今日もそれを許してしまう。いちいち反応することもないのかもしれないが、拒まないのもおかしい気がして、雲雀はトンファーを振りかぶった。
しかし、いつも呆気なく当たるそれは、ディーノが素早く構えた鞭に受け止められてしまう。
「そうそう、今日はこの為に来たんだよな」
その鞭でトンファーを押し返してきながら、ディーノは不敵に笑った。
「恭弥もずっとここにいて、体なまってるだろ」
「・・・・・・・・・」
今までと違って挑むようなディーノの眼差しに、雲雀は気分が高揚していくのを感じる。
「体は覚えているだろうし、戦ってりゃ何か思い出すかもな」
ディーノがそう言う通り、確かに自分たちはこんなふうに戦っていたのかもしれない。だとしたら、記憶が戻るきっかけになるかもしれない。
そして、元々持っている闘争本能が刺激されるのか、雲雀は単純にこの男と戦ってみたかった。
それから、地下にあるのに充分な広さのある中庭に場所を移して。時間を忘れてやり合ったが、結果的に、特に何も思い出せなかった。
だが、思いっきり体を動かして、気分は少しスッキリしている。
「あーあ、思い出せなかったな」
自室に戻って、ディーノもやはり勝手についてきて。軽い口調で言ったディーノは、雲雀に歩み寄ってきた。
そして、雲雀の頬に触れ、その手を今度は首筋に滑らせていく。
「やっぱ、こっちのほうが、思い出せるかな・・・それこそ、体が覚えてるだろうし」
ディーノはこれまで、キスは何度もしてきたが、それ以上の恋人らしい行為に及ぼうとすることはなかった。しかし今、微笑みながら見つめてくるディーノは、明らかに性的な匂いを感じさせる。
「・・・・・・・・・」
取り敢えず、無遠慮に触れてくる手を振り解こうか。雲雀がそれを行動に移す前に、しかしディーノが飛び掛かってきた。
「・・・っ!?」
とっさに動けなかった雲雀を、ディーノはちゃんとその腕で頭や背中をかばって、衝撃はさほどない。
「・・・何、するの?」
しかし当然、睨むように見上げる雲雀へ、ディーノはやっぱり悪びれた様子なく笑い掛けてきた。
「別にいーだろ? 恭弥はそうやって寝転がってるだけでいーんだから。よくしてやるよ」
「・・・・・・・・・」
雲雀に記憶を取り戻させる為、というよりはただ自分がやりたいだけなのだろうか。見つめてくるディーノの瞳には、欲情の色が覗いていた。
「・・・冗談、やめてくれる」
寝てるだけでいい、なんて言われても、はいそうですかと受け入れる気になどなれない。自分は男に組み敷かれる趣味はないはずで、やっぱりディーノの言っていることはでたらめなのかと思えた。
「いいだろ、別に減るもんじゃねーし・・・・・・ああ」
懲りずに言葉を重ねてきたディーノは、途中でふと何かに気付いたように一旦言葉をとめると、笑いながら言う。
「心配すんな、恭弥。おまえは突っ込むほうだからさ。な、減らねーだろ?」
「・・・・・・・・・」
減る減らないの問題ではないと思うが。確かにそれなら、拒絶するほどでもない気がした。その思考回路が、ディーノの言っていることが真実だという証拠なのだろうか。
どういう行動を取るべきなのだろうと雲雀が考えているうちにも、ディーノは合意を得られたと勝手に判断したのか、キスしてきた。
今までとは違って、触れるだけではない、濃厚さを持ったそれ。雲雀は特に、気持ち悪さも嫌悪感も覚えない。そういえば、始めからそうだった。
ディーノは雲雀のズボンをゆるめ、取り出した性器に躊躇なく口をつけてくる。舌と指を使った熱心な愛撫は、しかし少々ぎこちなかった。
「・・・あんまり、上手くないね」
思わず雲雀がそう言えば、ディーノは口を離さないまま笑って返してくる。
「手馴れてないかんじが興奮する、って恭弥が言ったんだぜ」
「・・・・・・・・・」
寝転んでいればいいと言われたが、少し体を起こして見下ろしながら、確かにそれはわかる気もすると雲雀は思った。
なんとなく手を伸ばして、奉仕するディーノの髪に指を絡めていく。すると視線を上げたディーノが嬉しそうに瞳を細め、その表情に雲雀はゾクリとした感覚を覚えた。
丁寧に舐めて吸われ、雲雀自身は素直に反応する。やがてディーノの口内に吐き出せば、彼は飲み干しちゃんと最後まで啜った。
仕上げにペロリと唇を舐める仕草に、これは少なくとも彼にとっては慣れきった行為なのだろうと雲雀は思う。その相手が果たして自分だったのか記憶はないが、しかしそうでないのにこんな真似をするだろうか。
ディーノは一旦雲雀の上から退くと、ズボンと下着を脱ぎ捨てて再び跨ってくるから、雲雀はしばらく考えるのはやめた。
雲雀の左手を取ると、ディーノはその人差し指と中指をねっとり舐め上げる。そうやってたっぷり濡らしたその指を、自らの下肢へと引っ張っていった。
「しっかり、中の感触を確かめて、思い出してくれよ?」
そして、ディーノは微笑みながらそう言うと、ゆっくりと雲雀の指を挿入していく。
「ん・・・やっぱ、やりにきーな・・・」
ディーノは顔をしかめながらも、左手だけで体を支えながら、内部で雲雀の指を動かしていった。
その、生々しい感触に、雲雀はゴクリと喉を鳴らす。この肉を掻き分け入り込めば、きっとそれは気持ちいいだろう。
男相手に自分が勃つのかと思っていたが、全くいらぬ心配だった。これも、経験に基いた反射なのだろうか。
「ねぇ・・・まだ?」
「まあ、待てって・・・」
思わず催促するように言った雲雀に、ディーノは少し揶揄うような笑顔を浮かべながら、促してきた。
「指の腹側の・・・もうちょっと上・・・」
「・・・・・・」
言われるままに指を動かしてみれば、ディーノの体がビクリと反応する。
「っぁ、ん・・・!」
思わずもれた、といったかんじのその掠れた声に、雲雀は自然と再度喉を鳴らした。そのままそこを刺激すれば、熱く絡み付いてくる内側に、雲雀の期待も高まる。
「・・・そこ、いいとこだから・・・ちゃんと覚えてろよ・・・」
ディーノはしっかりと教えてから、雲雀の指を解放した。そして、ゆっくり腰を下ろして雲雀を飲み込んでいく。
そこから先は、記憶を失くしていることなんて関係ない。本能のまま、雲雀はディーノの体を思う存分楽しんだ。
そして、今度もまた、特に何も思い出せずに終わってしまう。
「恭弥、なんか思い出したか?」
「・・・全然」
そういえば、と問い掛けてくるディーノに、雲雀は正直に答えた。するとディーノは、ダラリと畳の上に体を広げながら、軽い口調で返してくる。
「そっかー」
「・・・・・・」
雲雀は最初からずっと不思議に思っていたことを、今また改めて強く疑問として感じた。
ディーノは自分たちは恋人同士だと言いながら、その恋人が自分のことも全部忘れてしまったというのに、何故かさほどショックを受けているように見えないのだ。
「僕たちが恋人っていうの・・・やっぱり嘘でしょ」
「ここまでさせといてそういうこと言うか!?」
そう返してくるディーノには、やっぱり悲壮感なんて少しも見えなかった。雲雀は疑問を、率直にディーノにぶつけてみる。
「・・・普通、恋人がこういう状況になったら、もっと悲しんだり取り乱したり不安になったり、するはずじゃない?」
「・・・まあ、恭弥がオレのこと全然覚えてないのは、そりゃあ悲しいけど」
ディーノは体を起こすと、そっと雲雀の頬に指を触れさせてきた。そして、目を細めて笑う。
「でも、恭弥はこうやって無事ピンピン生きてるし・・・それ以上に嬉しいことはねーよ」
「・・・あなたのことを、一生思い出せなくても?」
「ああ、それでも」
笑顔で断言する、それは確かに何よりも雲雀に対する愛情に思えた。引き続いて雲雀の髪を撫でながら、ディーノは今度は明るく笑って言う。
「それに・・・もう一度、恭弥を好きにならせる自信あるしな!」
「・・・・・・」
そしてキスしてくるディーノに、確かに雲雀は、最初の頃のようにトンファーをぶつけたいとはもう思わなかった。
そのときは、唐突に訪れる。
雲雀はイタリアに飛ぶと、真っ直ぐディーノの屋敷を目指した。出迎えた黒服は、意外そうな顔をしながらも通してくれる。
お返しのようにノックもなしに扉を開けた雲雀は、ソファに腰を下ろし書類を眺めているディーノに声を掛けていった。
「・・・久しぶりだね」
その声に弾かれたように視線を向けてきたディーノは、眼鏡を外し立ち上がって。パッと浮かべた笑顔を、しかしすぐに微妙に変えていった。
「・・・ねぇ、聞いてもいいかな」
確かめるようにジッと見つめてくるディーノへ、雲雀は問い掛ける。
「僕とあなたの関係って、何?」
「・・・・・・・・・」
ディーノは少し黙ってから、その顔に苦笑いを浮かべ答えた。
「・・・元家庭教師と教え子、かな」
「・・・だよね」
そう、雲雀とディーノの関係は、ただそれだけのものだったのだ。
記憶を全て取り戻した雲雀は、同時に記憶喪失になっていた間のことも忘れることはなかった。そして、雲雀にはディーノのついた嘘が残された。
「だったら・・・僕が聞きたいことも、わかるよね?」
「・・・・・・・・・」
どうして恋人同士だなんて嘘をついたのか。どうして、その上であんなことまでしたのか。
答えを待つ雲雀の視線を、ディーノはしばらくただ見つめ返して。それから、ガックリしたようにソファに腰を下ろして呟いた。
「あーあ、バレちまったか・・・いい手だと思ったんだけどな・・・」
「・・・揶揄ってたわけ?」
ならば不愉快だ、と思う一方で。ディーノが自分に向けていた愛情、それはとても作り物には見えなかったと雲雀は思い返す。
「・・・恭弥が思いたいのでいいぜ」
「・・・・・・・・・」
どこか投げやりにも聞こえるその答えに、雲雀はとても納得出来なかった。
「・・・そうやって、これからも、隠してごまかしてやっていくつもりなわけ?」
「・・・・・・ハハ、恭弥はやっぱ手厳しいな」
力なくソファに体を預け笑うディーノは、さっきから決して雲雀と視線を合わそうとしない。俯けたまま、今度は皮肉るような笑みを口元に浮かべた。
「そうだな・・・今さら隠しても意味ねーか。オレはおまえの記憶喪失って状況を利用して、付け入ってやろうと思った」
観念したように口を開きながらも、ディーノは肝心の言葉を言わない。それがもどかしいような感覚で、雲雀は問いを重ねていった。
「・・・その為に、男に平気で脚を開くんだ。よく使う手なわけ?」
「まさか。大変だったんだぜ、調べて頭に詰め込んで・・・あとは、イメージトレーニングだな」
なるほど、手馴れていないように見えたのは、実際経験がなかったかららしい。それなのに、さも慣れているふうを装ってまで。
「そこまでするほど・・・」
あなたは僕のことが好きなの? なかなか自分から言わないディーノに、そう確かめようとして、しかし雲雀は少し考えた。そうだとディーノが答えたら、自分はどう応えるつもりなのだろう。
「ホント、まいったぜ。ずっと秘密にしておくつもりだったのに・・・魔が差しちまったじゃねーか」
「・・・・・・・・・」
頭をガリガリと掻いてから、ディーノはようやく雲雀を見上げてきた。
「でも、あのとき言ったのは本当だぜ。おまえが無事生きてる・・・それ以上に嬉しいことは、ない」
「・・・・・・・・・」
微笑んでそう言うディーノには、やっぱり自分への愛情が確かに見える。それなのにディーノは、全てなかったことにして、以前の通りの関係に戻ろうとしているように思えた。
そのほうが、雲雀にとっても都合がいいのかもしれない。そう考えながらも、雲雀はディーノに歩み寄っていった。そして、ディーノを左右から挟むように背凭れに手を置いて、その顔を覗き込む。
「どうあっても・・・言わないつもり?」
「・・・・・・・・・」
また視線を逸らし沈黙するディーノに、雲雀はハッキリとした口調で言った。
「・・・もう無意味だよ。僕には・・・聞こえた」
「・・・え?」
驚いたように見上げてくるディーノに、雲雀はゆっくりと唇を合わせていく。
恋人、そう言ったディーノの言葉を、雲雀は一度受け入れた。記憶があろうがなかろうが、自分は自分だ。そのときの記憶も、感情も残っているのならなおさら。
「自分の言ったことには、責任持ちなよ」
「・・・・・・・・・」
目を丸くしたディーノが、ちょっと情けなく顔を歪ませた。それから、ようやく伝えてくる。言葉と、何よりもその眼差しで。
「恭弥・・・好きだ、ずっと好きだった」
そういえば、その言葉を聞くのは初めてだった。そろりと腕を伸ばしてくるディーノを、雲雀も抱き返していく。
そして、今まで何度も繰り返してきた、でもきっとこれで最後になる問いを口にした。
「ねぇ・・・あなたと僕の関係は、何?」
「・・・・・・恋・・・人?」
まだ自信がなさそうに言うディーノを、雲雀は返事の変わりに、さらに強く抱きしめた。
記憶を失くす前にはディーノとこんな関係になるだなんて思ってもいなかったし、つまりディーノの計画にまんまと乗せられた形になってしまうが。それでも、雲雀はそう悪い気はしなかった。
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