その心、未だ知らず。



 リング争奪戦の一回戦、晴の守護者対決が見事ツナ側の勝利に終わった次の日。
 獄寺は、中山外科医院へ向かっていた。修行の息抜きに、ツナの顔でも見にいこうと思ったのだ。
 ツナのことだから、きっと昨夜怪我を負った了平のことを気に掛けているだろう。マフィア関連の争いでの負傷なら、まさか普通の病院に駆け込むわけにいかない。となると当然、中山外科病院で治療してもらう他なくなる。
 上手くすればそこにツナも来ているかもしれないと、獄寺はそう考えてやってきたのだ。
 いざ病院へと駆け込もうとしたところで、しかし獄寺は顔をしかめて立ち止まった。道の向こうから、山本がやってくるのが見えたのだ。
「よお!」
 陽気に手を上げて挨拶してくる山本を、獄寺は軽く無視して病院へ入った。
「おい、無視することないんじゃねーの?」
 気にした様子もなく、山本はいつのまにか獄寺に追いついて隣を歩く。獄寺は仕方なく、少し相手してやることにした。
「・・・・・・修業はいいのか?」
「ああ、息抜きも必要だろ? そういうおまえこそ、修業は順調なのか?」
「・・・・・・」
 順調にいっているかどうかと問われれば、あんまりいってないのだが。勿論、山本にそんなことを正直に答えるわけもない。
「当ったり前だろう! オレは10代目の右腕だからな!」
「そうか、よかったな」
 獄寺が言い放てば、山本は笑って言った。それが山本の余裕に思えて、獄寺はなんだか面白くない。山本のやることなすこと、妙に引っ掛かりを覚えることが獄寺には多かったのだ。何故かは、ツナの右腕を争っているから、だと獄寺は思っているが。
 隣に山本がいることが癪で、自然と早足になりながら、獄寺はツナの姿を探した。
 そのうち、応接室のような一室で、ようやくツナを見付ける。ディーノとのんびりお茶しているようだ。
「10代目っ!! ご機嫌いかがですかっ!?」
 獄寺は一目散に部屋に入ると、まずはツナに挨拶した。
「・・・あ、獄寺君。うん・・・まぁまぁかな・・・」
 自分に対して腰を45度ほどに折りつつ窺ってくる獄寺に、ツナはいつものように困惑顔で返す。勿論、獄寺もいつものように、ツナのそんな様子など見ていない。
「はは、相変わらずだなぁ」
 するとそんな光景に、ディーノが笑ったものだから、何が面白いのかわからない獄寺は当然ムッとした。
「跳ね馬、何がおかしんだ!?」
 ツナの兄貴分だろうがボンゴレの同盟マフィアのボスだろうが、年上の野郎は全て敵だと思っている獄寺にとって、ディーノは目障りな存在でしかない。さっそく突っかかろうとした獄寺だが。
「まーまー、落ち着けって」
「んなっ、山本!!」
 山本にうしろから羽交い絞めされるような形になり、獄寺の苛立ちは最高点に達し、反射的にボムを取り出そうとした。
 しかしそこで、呆れたような諦めたような顔をしながら、ツナが獄寺に言葉を掛ける。
「獄寺君、落ち着いて・・・まぁ、お茶でも飲もうよ」
「はい、10代目っ!!」
 するとパブロフの犬の如く、獄寺はあっさりツナの言葉に飛び付いた。
 そんな獄寺に、山本もディーノも笑いをもらしていたが、ツナしか目に入っていない獄寺の目には入らなかった。
「ま、おまえらも座れば?」
「お前に命令される謂れはねえ!」
「・・・獄寺君、取り敢えず座りなよ」
「はい! 失礼しますっ!!」
 ディーノの言葉をはねつけた獄寺は、ツナには敬礼して返す。別に獄寺にとっては何もおかしくない当然の行動だ。
 そしてツナの右腕を自負する獄寺は、ツナの右側に座ろうとして、しかしそこに席がないことに気付く。
 テーブルを挟んで左右に向かい合う二人掛けのソファ、そして獄寺から見て正面に一人掛けのソファ。ツナは向かって右側の奥に座っているのだ。ちなみにディーノは、一人掛けのソファ。
 獄寺は悩んだ。やはりツナの右側に座りたいが、その為にツナにわざわざ席を移動してもらうなどあり得ない。だったらどこに座るか・・・僅かな間に考え尽した獄寺は、ツナの正面に座ることにした。
 すると山本はその隣に座ってきて、山本とディーノに挟まれるような形になってしまったが、獄寺は我慢する。山本がツナの隣に座ったら、それはそれで許し難いからだ。
 だから気にしないことにして、獄寺はツナに話し掛ける。
「10代目は芝生頭のことが心配でここに来たんですか?」
「芝生・・・ああ、お兄さんか・・・。うん、やっぱり怪我の具合とか心配で・・・」
 やっぱり自分の読みは正しかった!と獄寺は得意な気分になる。加えて、やっぱり10代目はお優しい方だ!とツナに対する評価をまた一つ上げた。
 そのままの流れで、ヴァリアーや次の対戦の話をしていると、すっと扉が開いて黒服の男が現れる。手にトレーを持ったその男は、いつもディーノの背後に従っているロマーリオだ。
 ディーノの右腕であるロマーリオが、そつない動作で自分たちの前に紅茶のカップを置くのを見て、獄寺は自分もこれくらい出来るようにならなければ、などと思わされた。
「ボス」
 そのロマーリオが、扉の所まで戻って、ディーノに声を掛ける。
「オレは買い物に行ってくるが・・・一人でどっか行くんじゃねえぞ」
「おう」
「ボンゴレ10代目の前で粗相すんじゃねえぞ」
「わーってるって!」
 言われなくても、というかんじでディーノは答えるが、この場にいる誰もが、部下のいないディーノが思い切りへなちょこだと知っている。
 ロマーリオはツナに、ボスを頼みます、と視線で伝えた。
 そんなどっちが上司かわからない会話をしてから、ロマーリオは部屋を出ていく。それを、獄寺はつい眉をしかめながら聞いていた。前から、気になっていたのだ。
「おい、跳ね馬」
「・・・あ?」
 獄寺の呼び掛けに、テーブルに置かれたクッキーを口に運んでいたディーノが、ロマーリオがいなくなったとたんにクッキー片をまき散らしながら、獄寺のほうを向く。
 よく見ればディーノの周辺には食べこぼしがたくさん落ちていて、獄寺のディーノに対する評価がまた一つ下がったが、それはおいといて。
 ツナが、ディーノに一体どんな因縁をつけようとしているのか心配そうな顔をするが、獄寺はいつもの如く気付かない。
「お前はなんで、部下にあんな口の聞き方を許してんだ?」
 常にボンゴレ次期10代目であるツナに敬意を払っている獄寺にしてみれば、あり得なかった。
 ロマーリオをはじめ、キャバッローネの部下は一様にディーノに対して気安い。扱いこそときに過保護と思えるほどだが、言葉遣いなど完全にタメ語だ。
「言葉遣い? なんかおかしいか?」
 獄寺は気になって堪らなかったのだが、すでに気にならなくなっているらしくディーノは首を傾げる。
「確かに、なんていうか・・・フレンドリーですよね、ディーノさんの部下って・・・」
 獄寺の自分に対する態度によく困惑させられるツナは、ちょっと羨ましそうに言った。相変わらず、それに獄寺は勿論気付かない。
「まあ、そーかもな。オレが生まれたときからいたような連中ばっかだからな。言葉遣いとか、今さら気になんねーな」
 しかもディーノの場合、部下がいないとへなちょこだから余計に一緒にいる時間が多いのも一因なのだろう。
 そんなふうに親密なディーノと部下の関係が、ちょっと羨ましいと思ってしまった獄寺は、悔し紛れに言った。
「まあ、お前とずっと一緒にいなきゃならないあいつらも、大変だけどな!」
 ディーノの部下に同情するように言えば、ディーノは明るく笑って答える。
「そこはオレの、ボスとしてのカリスマ、ってやつ?」
「・・・・・・」
 相変わらずクッキー片をまき散らしながらの言葉では、説得力も何もない。獄寺ばかりか、さすがにツナもそう思った。山本だけは、さすがっすねー、と言いたげに笑っているが。
「・・・でも」
 しかしツナは、やはりどちらかというと部下よりディーノの立場で考えてしまうのだろう。
「ずっと部下の人が側にいて、困ることとかありませんか?」
 オレはずっと側にいられるのはちょっと・・・とツナが獄寺を念頭に置いて問い掛けてみた。そこに含まれるものを、獄寺は勿論とにかく気付かない。
「別に、それだって慣れてるしなあ。それに大抵は、ロマーリオだし」
 と、ディーノはよくわからない理由を挙げる。前半はともかく、後半はどういうことだろうと、三人は首を傾げた。するとディーノは、もうちょっと具体的に言ってくれようとする。
「一緒にいられんのはいいことだしな。なんたって、ロマーリオはオレの・・・あれだ、
anima gemella だからな」
 ディーノは言葉を選びあぐねたのか、肝心な部分をイタリア語で言った。当然ツナと山本にはわからなかったのだが、どちらかというとイタリア語が母国語の獄寺には当然わかる。
 anima gemella とはイタリア語で、最愛の恋人、伴侶、という意味で使われる単語だ。
「・・・・・・・・・・・・・・・はあ!?」
 獄寺はソファから器用に転げ落ちそうになった。
「・・・・・・じょ、冗談か・・・?」
「冗談じゃねーよ。マジマジ」
 体勢を立て直しつつおそるおそる確認する獄寺に、ディーノは笑顔ですぱっと返してくる。
「・・・なんて言ったの?」
「ああ、つまり、・・・」
 それどころかディーノは、キョトンとして聞いてくるツナに、何やら説明しようとした。勿論獄寺は、慌ててそれをさえぎる。
「そんなこと10代目の耳に入れんじゃねえ! ていうか、冗談なんだろ!?」
 やはりとても信じられない獄寺を、ディーノはちょいちょいと手招きした。
 つい身を乗り出した獄寺の、肩を左腕で抱いて、ディーノはさらに引き寄せる。ツナと山本に二人して背を向ける体勢になってから、ディーノは自分の服の襟を引っ張った。
 獄寺に見せつけるように、晒された鎖骨辺りの肌にあるそれは、キスマーク。
「・・・・・・!!!」
 生々しいものを目の当たりにして、獄寺はつい顔を赤くした。それから、ハッとする。
『てめえ、10代目に近付くんじゃねえ! 10代目に手を出したら許さねえぞ!!』
 獄寺は慌てて立ち上がり、ツナとディーノの間に割って入りながらイタリア語で言った。ディーノにそっちの趣味があるということは、ツナに手を出す可能性もある。釘をさしておかなければならないが、そのことをツナの耳に入れるわけにはいかない。
 おかげで、突然獄寺に前に立たれたツナも、それから山本も、一体何が起こっているのか全くわからずポカーンとしていた。
 獄寺の配慮がわかったのか、ディーノも獄寺に合わせて、イタリア語で話す。
『落ち着けって、考えたらわかるだろ? ツナはかわいいとは思うけど、オレにとったらちょっとかわい過ぎんだよなぁ』
 言われてみれば確かに、ロマーリオはダンディな大人の男、対するツナは獄寺にとっては男前に見えるが、しかしタイプがあまりにも違うのは明らかだ。
 まず安心して、それなら自分もディーノの範疇から外れてるんだろうと再度ホッとする。
 それから獄寺は、つい山本のほうを見てしまった。するとディーノは獄寺に意味ありげに笑い掛けてから、視線を山本に向ける。
『山本は、いい線いってるなあ。大物オーラあるし、将来が楽しみというか・・・いや、今でも充分・・・』
 観察するように山本を見るディーノに、獄寺はなんとなく焦り似たものを感じた。
『な、何言ってんだ、山本だぜ・・・?』
 動揺を、なんとか隠しながら、軽い口調で言った獄寺を、見透かすように。ディーノは立ち上がって、獄寺が動いたおかげで空いている山本の隣に座る。そして、山本の肩に腕を回し、顔を近付け・・・その頬にキスをした。
「!!!」
 獄寺もツナも、それから普段あまり動じない山本も、さすがに驚いた顔をする。
 だが、ディーノが「挨拶挨拶!」と言うと、山本はあっさり納得した。西洋人が頬にキスするのは日常茶飯事、というイメージがあるせいだろう。
 だが、勿論話の流れから、獄寺はそうなんだと安心は出来ない。山本の肩に手を掛けたままのディーノに、獄寺は相変わらず焦りのようなものを感じつつ噛み付いた。
『な、何してんだ! そいつから離れろ!』
『なんでだ?』
 だがディーノは、山本から離れず、涼しい顔して言う。
『おまえ、山本のこと別にどうでもいいんだろ? だったら、オレが手を出しても構わなくね?』
『・・・・・・・・・』
 確かに、ディーノの言う通りなのだが。
「なあ、山本?」
 ディーノが山本に笑い掛けると、山本は当然なんのことかわからず、でもディーノに笑い返す。
 獄寺は、なんだかムッとした。何故かはわからないが、何か面白くない、気がする。
「・・・あのー、さっきから一体何を・・・・・・」
 だが、ツナが控えめに話しに入ってきたもんだから、獄寺はディーノたちに構ってもいられなくなった。
「いえ、10代目! 10代目が気にすることでは・・・!」
「・・・そうなの?」
「そーだ、気にすんな」
 獄寺に調子を合わせてくれるディーノは、未だ山本の肩に腕を回している。その腕を振り払おうとする様子のない山本が、やっぱり獄寺の気に障った。
 だが気にしないことにして、獄寺はさっきまでディーノが腰掛けていたソファ、つまりツナの右側に座る。
 するとディーノは、これ以上獄寺で遊ぶことは出来ないと思ったのか、山本からすっと離れた。そのまま立ち上がり、ドアのほうへ歩いていく。
「じゃ、オレはそろそろ、恭弥を鍛えてくんな」
「え、でも」
 一人だと危ないんじゃ、と心配するツナに、ディーノは何もわかってない笑顔で返した。
「別に大丈夫だって。おまえらも、休憩もほどほどに、ちゃんと修行しろよ!」
 兄弟子らしい言葉を掛けて、ディーノは部屋を出ていく。
 獄寺は、なんだかホッとした。わけのわからない行動をとったディーノのことが気になるものの、いなくなったんだから考えるのはよそうと思う。
 一方ツナは、まだ心配そうにディーノが出ていった扉を見ていた。
「ほんとに大丈夫かな、ディーノさん・・・」
「本人が大丈夫って言ってんだから、そうなんっすよ。10代目が気にすることじゃないっす!!」
 獄寺がそう言った、直後。ズダダダーーン!!と、どこからか何かが落下する音が聞こえてくる。何か、というかどう考えても、ディーノだろう。
「ああ、やっぱり・・・。オレ、心配だからちょっと見てくるね!」
「10代目!」
 ツナが部屋を駆け出して行くもんだから、獄寺も当然それに従おうとしたのだが。
「まーまー、様子見にいくんだからツナだけで充分だろー」
 ソファにどっしり掛けたままの山本が、獄寺に声を掛けてきた。
「紅茶、飲まないとそろそろ冷めるぜ? それとも、そんなにディーノさんが心配か?」
「そ、そんなわけないだろ!」
 そんなふうに言われると、獄寺はツナのあとを追いかけていくことが出来なくなる。仕方なく獄寺は腰を下ろした。
 そして、おかげで山本と二人っきりになってしまったことに気付く。別に、だからどうだってわけではないはずなのだが。
 何か、気まずいような気がした。獄寺はそれをごまかす為に、カップを手に取りやっぱり冷めている紅茶を喉に流し込んでいった。山本もクッキーに手を伸ばしながら、呑気に獄寺に話題を振ってくる。
「そういえばおまえ、帰国子女だったっけ。イタリア語ペラペラで、びっくりしたなー」
「・・・・・・」
 獄寺は、そんな山本を無視しつつ紅茶を啜っていたのだが、次の山本の一言でその紅茶を噴いてしまいそうになった。
「でも、一体何話してたんだ? 二人してオレの名前出してたみたいだけど」
「・・・・・っ別に、なんでもねえよ!!」
 動揺をわかり易く態度に表しながらも、獄寺は全力で首を振った。あのときのやり取りなど、とてもじゃないが山本には言えない。
「大体、てめーの名前なんて喋ってねえし!!」
 獄寺はシラを切り通すつもりで、ぷいっと山本から顔を背けた。その様子に、山本が忍び笑いをもらしたことに、獄寺は気付かない。
「さーて、オレはそろそろ修行に戻るとすっかな」
 伸びをしてゆっくり腰を上げる山本に、視線を向けないまま手を振って、獄寺はいつものように憎まれ口をたたいた。
「戻れ戻れ。おめーが弱っちいままだと、10代目が侮られっからな」
「・・・獄寺」
 そんな獄寺の名を呼んで、山本は腰を少し屈める。そして、近付いてくる気配に、獄寺がつい山本に視線を向けると。
 すぐ目の前に山本の顔があって、さらにその距離が縮まって。ふにっ、と柔らかいものが頬に触れた。
「・・・・・・・・・んなっ・・・っ!?」
 獄寺は、飛び退こうとして思いっ切りソファから転げ落ちる。地面に尻をついたまま、右頬を押さえて獄寺は山本を見上げた。
「・・・な・・・何しやがんだ・・・っ!?」
「何って、決まってんだろ」
 対照的に山本は、いつもの鷹揚な笑顔を浮かべて答える。
「挨拶挨拶!」
「・・・・・・・・・」
 てめーは日本人だろう!とか、今その挨拶するタイミングじゃねーだろ!とか。言うべきことはあるはずなのに、獄寺の口はパクパク開くだけで言葉が出てこなかった。
「じゃ、また今晩、ってとこだな。おまえも修行、頑張れよー」
 そんな獄寺に何事もなかったかのように山本は手を振って部屋を出ていく。
「・・・・・・・・・」
 それを言葉もなく見送って、しばらくして、獄寺はやっとハッと立ち直った。誰も見ていないというのに、慌てて立ち上がり平静を繕ってソファに座る。
「はっ、そういえば10代目が帰ってこられない・・・!」
 それから、やっぱりすくっと立ちあがって、誰もいないのに口を動かし始めた。その様は、さっきまでの出来事を必死で忘れようとしているかのようだ。
「それに、オレもそろそろ修行に戻らねえとな! 山本なんぞに後れを取るなんてあり得ねえし!」
 そこまで言って、しかし山本の名を出したせいで、さっきのあれを思い出してしまった。
 本人が挨拶と言っていたのだからそうなのだろうが、獄寺はなんとも言えない感覚に襲われる。それはたとえば、戦闘中に気分が高揚したときのような。実際、本人は気付いていないが、獄寺の顔は少々紅潮していた。
 だが獄寺は、首を振ってその感覚を振り払う。
「・・・・・・いや、山本の野郎は関係ねーけど!!」
 それからまた誰もいない空間に言い放ちつつ、獄寺は扉に向かった。
 ともかく今は、ツナの為に新技を完成させることが先決なのだ。山本なんかに気を取られている場合ではない。というか、気を取られてなんかいない、獄寺はそう思っている。
「よし、今日こそ新技を完成させてみせるぜ! 待ってて下さい10代目っ!!」
 ぐっとこぶしを上に突き上げ決意しつつ、獄寺は中山外科医院をあとにした。
 結局のところ、この日も獄寺は、新技を完成させることが出来なかったが。このときの一件が多少なりとも影響していると、勿論認めるどころかその可能性にも気付いていない獄寺であった。




 END
山本のあれがわざとなのか天然なのか、微妙なラインです。
しかしあの原作の、山本らしさ、を出すのは難しいですね!(敗北感)

ちなみに、ディーノはすぐにロマーリオが帰ってきて雲雀のとこに向かい、ツナもリボーンに修行に連れてかれました。