prova !



 一日の仕事を終えて。
「じゃあ、明日の朝はゆっくり出来るんだな」
 そう確認しながら、ディーノは部屋の前まで送ってきたロマーリオを、手招きしてきた。そのまま部屋の中に連れ込まれるから、ついに解禁かと、ロマーリオは喜ぶ。
 部屋のドアを閉めると同時に、ディーノは抱き付きキスをしてきた。恋人同士の濃厚なキスをしながら、ロマーリオはディーノの背に腰に腕を回していく。
 だが、しかし。
 すぐにスルリと、ディーノの体がロマーリオの腕から抜け出ていってしまった。
「・・・ボス?」
 当然不思議に思うロマーリオを、ディーノはさらに体を押して、部屋の扉を開けて外へ追いやる。
 なされるままに部屋から追い出されたロマーリオを、閉めかけの扉の隙間から見て、ディーノは綺麗に微笑んで。
「じゃあ、お休み、ロマーリオ」
 そう言って、無情にもロマーリオの眼前で扉は閉まってしまった。ロマーリオはその扉の前で、しばらく呆然と立ち尽くす。
 ファミリーを抜けようとした罰として、キスより先は当分おあずけ。ディーノにそう宣言されて以来、万事がこうだった。
 あれからもう一ヶ月になろうかというのに、未だにおあずけは解かれず。だったらせめて、そっとしておいてくれればいいのに。
 ディーノはさっきみたいに、ロマーリオをわざと煽ってきて、その上で突き放してくるのだ。
 30半ばのロマーリオ、性欲はまだ衰えていない。愛する相手と濃厚なキスをして、それで何事もなかったかのように寝るなど、出来ない。
 今日も、眠れるのは何時になるのか。ロマーリオは熱を逃すように溜め息をつきながら、自分の部屋に戻った。


 それから数日も経たないある日の昼過ぎ。時間が空いて、ロマーリオはディーノと部屋で二人きりになった。
 ディーノは当然のようにロマーリオの座るソファに近付いてきて、ロマーリオの肩に手を掛け、そしてキスを仕掛けてくるからロマーリオは困ってしまう。
 勿論、ディーノとのキスは好きだ。こんなふうにディーノに触れることが出来るなんて、神にいくら感謝してもし足りない。
 だが、やはり困る。
 どうせディーノは、いつものように、ロマーリオを煽るだけ煽って突き放してくるに違いない。
 まだ軽いキスを繰り返しているうちに、その合間にロマーリオは、単刀直入に尋ねてみることにした。
「なあ、ボス」
「なんだ?」
 小首を傾げてみせるディーノは、ロマーリオが何を言いたいのかわかっているように見える。ロマーリオは溜め息つきながら切り出した。
「まだ、駄目なのか?」
「何が?」
「だから・・・」
 知らない振りしているとしか思えないディーノに、露骨に伝えてやろうと、ロマーリオは自らの股間を指しながら言った。
「オレもそろそろ、我慢も限界なんだが?」
 それでもロマーリオがおとなしくしていたのは、ファミリーを抜けようとした、それを何よりの罪だと言ったディーノに対して、負い目があったからだ。そしてそもそも、ロマーリオにはディーノに逆らうことなど出来ない。
 だが何事にも、限度というものがある。
 ディーノは、視線をロマーリオの股間に落とし、それからロマーリオの顔に向け。そして、心外だと言いたげに呟いた。
「ロマーリオ、オレはおまえよりずっと、若いんだぜ?」
「・・・それが?」
「おまえよりもずっと、我慢なんてきかねーってこと」
 つまりディーノもとっくに、キスだけでは足りなくなっているということだろうか。
「じゃあ、ボス・・・」
「・・・だよなあ、いつまでもキスだけってのも、おまえにも悪いしな。もう子供じゃねーんだし」
「ボス・・・」
 ディーノの呟きに、ロマーリオの期待はどんどん高まっていく。
 そんなロマーリオを見て、ディーノは微笑んだ。その天使のような笑顔が、実はむしろ悪魔のものだったとわかるのは、すぐあとのこと。
「じゃあ、頑張って我慢しているおまえに、ご褒美だ」
 そう言いながらディーノの手が、ロマーリオの体を撫で下ろしていき、そしてズボンの上から股間に触れてきた。
「して、やるよ」
「っ、ボス・・・!?」
 そう言い見せつけるように唇を舐めたディーノが、ロマーリオの正面にひざまずこうとしてくるから、ロマーリオは焦る。とめようとディーノの体を押し返そうとしたロマーリオに、しかしディーノは一言。
「動くな」
 キッパリと、ディーノにそう言われてしまえば、ロマーリオはそれに従うしかなく。言葉通り、動けなくなってしまった。
 仕様もなくソファに腰を沈めるロマーリオの正面に座り、ディーノは早速ベルトに手を掛けてくる。行動でとめられないのならどうにか言葉で、とロマーリオは口を開いた。
「・・・ボスはオレより若いんだろう? 自分はどうするんだ?」
「オレは自分で始末すっから、おまえは気にすんな」
「・・・・・・・・・」
 答えながらもとまらないディーノの手が、しかしロマーリオの次の問いに、とまる。
「ボス・・・そんなに、怒ってるのか?」
 ディーノがこんなことをするのは、ただ面白がっているだけか。それとも本当に、ディーノから離れようとしたことに対する罰なのか。もう一ヶ月以上になるのに、未だに根に持っているのか。
 ロマーリオの問いに、ディーノがゆっくりと立ち上がった。
「・・・当然だろう?」
 ディーノはロマーリオの頬に手を添え、至近距離から顔を覗き込んで、笑う。
「おまえがオレから離れようとしたことを、簡単に許せるわけがない」
「・・・・・・・・・」
 さすが、5千のファミリーを抱えるマフィアのボス。その瞳と視線を合わせただけで、並の人間なら竦み上がってしまうだろう。命も何もかもを、握られてしまった感覚。
 だが、そのときロマーリオに湧き上がったのは、恐怖と紙一重の、歓喜だった。
 自分の存在に、ディーノがこんなにも固執している。その事実を思い知ることはロマーリオにとって、何にも変え難い喜びだった。
 ディーノは再び身を屈めロマーリオの股間に手を伸ばしてくるが、ロマーリオにはもうなす術もない。すぐに外気に晒されてしまったロマーリオの性器に、ディーノの視線が絡み付いてきた。
「・・・・・・ふうん」
「・・・・・・・・・」
 何やら興味深そうにしげしげと見られて、ロマーリオは大変居心地が悪い。
「・・・・・・ボス」
「・・・ああ、悪ぃ。ついな、立派なもん持ってんじゃねーかと思ってな」
 思わず声を掛けたロマーリオに、ディーノは感心するように言って。前触れなくピンッと指で弾いてくるから、堪らない。
「っ、ボス・・・!」
「急かすなよ。今から、してやるから」
 いや急かしているわけではない、と言ったところでディーノには通じないだろう。
「どれくらいデカくなるかな・・・」
 とか楽しげに呟きつつ、ディーノはまずは指を添えてきた。形を確かめるように、微かに撫でられただけで、ロマーリオの性器はムクリと頭をもたげ始める。相手が愛するディーノなのだし、何よりロマーリオはこの頃すっかり欲求不満気味なのだ。
 だが同時に、なんとも言えない気まずさのような、罪悪感のようなものもロマーリオは感じていた。恋人という関係が長くなれば、違和感もなくなるのかもしれないが。やはり今はまだ、ロマーリオにとってディーノは、何よりもボスで。そんなディーノに、こんなことをさせていいのか、という躊躇い。
「・・・ボス、誰か来たらどうするんだ?」
「鍵、かけてる。だから誰も、来ねーよ」
 ロマーリオにニヤリと笑い掛けてから、ディーノは躊躇わず唇を触れされてきた。そうなれば、用意周到さに感心する暇もない。
 好きな相手に性器を愛撫されれば、やはり否応なく感じてしまった。勿論、ディーノの舌遣いは決して巧みとはいえない。だが、こんなことが上手くても困るし、むしろその拙さに興奮する。
 何より、眼下の光景。少し前まではキスすることすら許されないと思っていたディーノの口が、自分の性器を咥えている。キャバッローネファミリーのボスが、自分の性器に舌で触れているのだ。
 その光景は、うしろめたさや背徳感をロマーリオに生じさせ、しかし同時に、だからこそひどく甘美で。ロマーリオの股間は、素直に反応した。
「まだまだ、若けーな、ロマーリオ」
 ディーノは揶揄うように笑って、さらに舌を絡めてくる。根元から先端まで、反応を見ながらゆっくりと隈なく愛撫を加えていった。
「・・・・・・ボス」
 動きに合わせて揺れるディーノの髪に、ロマーリオは自然と手を伸ばそうとしたが。
「ロマーリオ」
 それを気取ったディーノは、口は離さず、ロマーリオを見上げて。
「触るな」
 ピシャリと言われて、ロマーリオの手が困って迷った末、仕方なくソファの上に降りた。
 やはりこれは、ご褒美ではなくお仕置きなのではないか、ロマーリオはそう思う。ディーノから一方的に奉仕されるのは、何か居心地が悪く。気持ちいいがだからこそ決まり悪く、ディーノに触れたい思いを抑えるのもつらく。
 一方のディーノは、そんなロマーリオの気を知ってか知らずか・・・多分、知っているのだろうが。ハァと熱の篭った息を吐きながら、呟いた。
「・・・なんか、興奮してきたな」
「・・・・・・・・・」
 その言葉表情だけで、ロマーリオにとっては大変刺激的だというのに。
 ディーノは、右手を自分のズボンへと伸ばしていった。言った通り、自分で始末するつもりなのだろうか。
「・・・ボス、オレが」
「触るなって、言ったろ?」
 やはりピシャリとロマーリオを撥ね付けたディーノは、右手をごそごそと動かす。ロマーリオから、そこはディーノの頭や上半身がじゃまをして見えず、ただ音だけが聞こえてきた。
 右手だけで器用にベルトを外しジッパーを下げ、そして手を下着の中に潜り込ませる、音。
 聴覚につい集中していたロマーリオだが、ディーノの舌の動きが再開して意識をさらわれてしまう。相変わらず手探りの愛撫をロマーリオに施しながら、自らへも指を絡めるディーノの顔が目に見えて上気してきた。
 片手だけで、ロマーリオを咥えながらでは、満足に出来ないだろうに。だから自分がいくらでもしてやるのに、ロマーリオはそう思う。
 ディーノを気持ちよくさせてやりたい、というよりはただ、自分がディーノに触りたいだけだった。
「なあ、ボス、・・・ボスに触らせてくれ」
「・・・だめ、だ」
 互いに吐息まじりの声で、ディーノはしかしやはり譲らない。
「だったら・・・、もう・・・やめてくれ」
「・・・いや、だ」
「ボス・・・・・・」
 ロマーリオは困りきってしまった。そろそろ、限界なのだ。
 それが、きっとディーノもわかっているのだろう。
「ロマーリオ、余計なこと考えてねーで・・・」
 上目遣いで、見せ付けるように舌を動かしながら、ロマーリオに告げる。
「そろそろ、いけよ」
「っ・・・・・・」
 ゾクリと背筋を這い上がるものを、ロマーリオは必死で押さえ付けた。さすがにこの状態で、吐精することは出来ない。
「だったら・・・離してくれ」
「だから、嫌だって」
 とことんロマーリオの要求は弾かれ、ディーノは逆に促すように歯まで立ててきた。
「・・・じゃあせめて、口を離してくれ」
 ロマーリオは懇願するように言ったが、見上げてきたディーノは、ただ笑うだけで。どうすればいいのか、そう悩むことも、きっとディーノはロマーリオに許していないのだろう。
 そのまま愛撫を続けられれば、耐えることもそう出来ず。
「・・・ボス・・・っ」
 ディーノの頭を鷲掴みたい衝動を、こぶしを握り締めて抑え付けながら、ロマーリオはそれでも吐精の欲求には勝てなかった。
 低く喉を鳴らしながら、やがて達してしまう。
「・・・・・・ボス、・・・すまねえ」
 それでも口を離さなかったディーノは、ロマーリオがハンカチを差し出しても、受け取ろうとせず。溢れ出した精液まで舐めていくから、ロマーリオはハァと溜め息をついてしまった。
 確かに行為だけ見ればご褒美かもしれないが、精神的にはこれはどう考えても罰だ。
「・・・ボス、満足か?」
 果てしない疲労感を感じて問うロマーリオに、ディーノはやっとハンカチを受け取って左手を拭いながら、サラリと言ってのける。
「ちょっと待ってくれ、オレは、まだだからな」
 そしてディーノは立ち上がり、ロマーリオの肩に額を押し付けるようにして、体を預けてきた。
 どうせロマーリオに触らせてくれるつもりはないのだから、ロマーリオを追い出して一人でやってくれればいいのに。
 そう思っても、ロマーリオに言えるはずもなく。そんな体勢で、ディーノは右手を動かし始めたのだ。
「・・・・・・ん、」
 視線を逸らしていても、耳のすぐ近くでディーノの息遣いが聞こえ、うっかりするとまた元気になりそうになる。ロマーリオは硬く目を閉じながら、聖人の名前を数え上げたりして気をどうにか逸らした。
 本能のままにディーノを抱きしめ、そのまま抱きたい気持ちは、それこそ溢れんばかりにある。
 だが、ディーノが駄目だと言った、それに逆らうことはロマーリオには出来なかった。ロマーリオは一度、ディーノを裏切っている。その側から離れようとした、そういう形で。
 そして同時に、もう二度と、どんな形であれディーノを裏切ることは出来ないと、ロマーリオは思い知ったのだ。
 ディーノが自分に欲することには、なんであれ、ただ従うと決めたのだ。
「ん、っ・・・・・・はぁ」
 ロマーリオが耐えることしばらく、ようやくディーノも熱を吐き出した。やはり今回はそこまでで終わりらしく、ディーノはハンカチで始末しあっさりと服装の乱れを直していく。
 それから、またロマーリオに体を預けてきて、まだ上気したままの頬を寄せてくきた。
「・・・本当は、キスしたいところだけど・・・やめとく」
 そしてディーノは揶揄うような、意地悪く見える笑顔を浮かべる。
「自分の精液の味なんて、知りたくねーだろ?」
「・・・・・・ボスのだったら、大歓迎なんだが」
 ロマーリオがそう言ってみても、ディーノは相変わらずつれない態度を崩さなかった。
「それは、そのうちな」
「・・・・・・いつになったらいいんだ」
 もしかしてまだまだ先なのか、ロマーリオは弱ってしまう。
 しかし、自分を見つめる、何か考えているようなディーノの瞳に、なんとなくドキリとしてしまった。そういえば最近自分は、先をねだってばかりいた気がする。
「いや別に、あんたの体が目当てってわけじゃねーんだぜ?」
 誤解されては堪らないと、ロマーリオはついそう口にしてしまった。するとディーノは目を丸くして、それから弾かれたように爆笑し始める。
「わ、わかってるって、んなこと!!」
 可笑しくて堪らないといったようにロマーリオをバシバシ叩きながら一頻り笑って、それからディーノは目元を拭いながらも、労うように言った。
「でも、よく耐えたな、ロマーリオ」
「・・・ボスがそうしろって言ったんじゃねーか・・・」
 溜め息つきながら呟いたロマーリオの、脚の上に座るようにしながら、ディーノも何やら呟く。
「そうだな・・・大丈夫そうだな・・・」
「・・・何か・・・試してたのか?」
 うんうんと頷いているディーノに、もしかしてと聞いてみれば、あっさりと笑顔で肯定されてしまった。
「だって、オレの身にもなってくれよ。あのときの勢いでこられるのは、さすがにオレもなぁ・・・」
「・・・・・・・・・」
 あのとき、というのは、酔いに任せてディーノをベッドに引っ張り込んでキスした、あのときのことだろう。そのときのことを持ち出されると、ロマーリオも弱る。
「・・・それは、あのときは酔ってたからで・・・もうあんなことはしねーよ」
「って、言葉で言われてもなぁ」
 首を傾げ見つめながら、ディーノは両腕をロマーリオの首に回してきた。
「だから、ちゃんと待てが出来るかどうか、試したんだ」
「待て、って・・・」
 つまりディーノは、ロマーリオの理性を試していたらしい。納得は出来るが、しかしその言いよう。
「オレは犬か・・・?」
 思わず問えば、ディーノはロマーリオの頭をよしよしと撫でながら、悪びれずに笑って言った。
「あぁ、立派な忠犬だったみたいだな!」
「・・・・・・・・・」
 ロマーリオはもう、脱力するしかない。しかしディーノは、さらに追い討ちをかけるように。
「まあ、試してたのと、ご褒美と、仕返しと・・・それから、趣味だな」
「・・・・・・趣味」
 前の3つは理由のあることだからまだともかく、趣味というのはつまり、やはりディーノがただロマーリオで遊んでいたということで。
 だとしたら、もしかしたら今後も、こんな困ったことをしてくれる可能性があるのだろうか。そう思うとロマーリオは、頭を抱えたくなった。同時にどこか楽しみに感じてしまっている、のは気のせいだ。
「でも、見事に耐えてくれたしな」
「・・・・・・ボス」
 ディーノは思案するように首を傾げて、それからもう一度見つめてくるから、ロマーリオは今度こそかと期待する。
 しかし半分、また駄目だと言われるのではないかと覚悟していたロマーリオに、ディーノは微笑み掛け。
「言っただろ? オレだってとっくに、我慢の限界だって・・・」
 囁くように言って、ディーノはロマーリオに口付けてきた。言葉通りに、急いたようなディーノの唇が舌が、ロマーリオを絡め取ってくる。やはり若干不味い味がしたが、ロマーリオは気にしないことにした。自分からディーノとの口付けを解くなんて、考えられない。
 それよりも、ロマーリオは思った。今度こそ、ディーノに腕を伸ばし抱きしめてもいいのだろうか、きっと許されるはずだ、と。
 ゆっくりと腕を回そうとしたディーノの体が、しかし、と言うべきかやはりと言うべきか、スルリと逃げていく。
「・・・・・・ボス」
 ロマーリオはまた行き先を失った腕を、仕方なくソファに降ろした。そんなロマーリオを、ディーノは正面に立って見下ろし、口を開く
「パーティあった夜とか、なしな。おまえは飲酒も禁止。あと・・・揉め事とかあった日もやだし、この屋敷以外で、ってのも気は進まねーな。それから・・・あ、次の日朝から仕事があったら、嫌だから」
 条件を指折り数え上げ、ニコリと笑いながら、ディーノはこともなげに言い放った。
「てわけで、スケジュール調整、頼んだぜ」
「・・・・・・・・・」
 ボスであるディーノのスケジュールを、その条件に合わせることが、どれほど大変か。だが、ディーノの当面の予定はロマーリオの頭に入っている。どうにかしなければ、一体いつの日になるのか気が遠くなりそうなほど先のことになってしまうだろう。
 何より、ディーノに頼んだ、そう言われてしまえば。
「・・・・・・・・・了解した」
 もはやそれ以外の返事など、ロマーリオに選べるはずもなかった。
 それでも小さく溜め息が出るロマーリオに、ディーノは満足そうに頷いてから、頬に音を立ててキスしてくる。
 頑張れよ、と他人事のように言いたげなその笑顔も、ロマーリオにとっては何よりも魅力的に映ってしまって。
 ロマーリオは、思った。
 とんでもない相手を好きになってしまった、というよりはとんでもない相手に好きになられてしまった、のほうが正しいかもしれないと一度は思い直したが。
 やはり、こんなディーノに惹かれてしまう自分が、一番どうしようもない。




 END
これは何プレイなのでしょうか…

タイトルの「prova」はイタリア語で、「テスト、試練、挑戦、苦難、苦悩、やっかいな人」などなど、そういう意味の単語らしいです。